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缶詰。

 Yuru.∞ 返信

 ・・・・・・それは、物語がぎゅうぎゅうに詰まった、小さくて大きな缶詰。
2015/12/06(日) 10:50 No.38 編集 削除



 姫は、なよ竹のかぐや姫のように美しいため、『かぐやの君』と呼ばれていた。

「一生君を離さない。愛している」
「まあ、でも・・・・・・」
 かぐやの君が何か言う前に、右近の少将はその姫の唇を塞いだ。少将は接吻したまま、かぐやの君をぎゅっと抱きしめる。かぐやの君の髪のお香のにおいが、少将にはさらに愛しく思えた。
「君以外に、妻はいらない。君がいれば、わたしは幸せだから」
 やっと唇を離し、少将は甘い台詞を吐く。
 すると、姫は悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。
「では、接吻の感想は?」
 頬を赤らめるかぐやの君。少将は見惚れながら答える。
「今までで一番幸せな接吻だったよ。世界一の接吻だ」
 姫の笑顔が見たくて、少将は言ったのだ。
 しかし、姫の態度はその正反対で。
「さようなら、右近の少将さま」
 突然、姫は冷たくそう告げると、足音も立てず優雅にその場から去ろうとする。少将は驚いて、なんとか姫の透き通るような白い腕をつかんだ。
 だが、かぐやの君はその少将の手を振り払う。
「『今までで一番幸せな接吻』ということは、今まで何度も女と接吻してきたのですね。私は、そ んな女好きの男とは、結婚なんてお断りですわ。・・・気をつけてお帰り下さいまし」
 右近の少将は、呆然と立ちすくむしかなかった。

 かぐやの君は、恵まれた姿にもかかわらず、生涯独身でいることになる。
 それは、かぐや姫のように、求婚してくる殿方を、全員切り捨てていくからだ。
 ・・・・・・すべては、運命の人と結婚するため。
2015/12/06(日) 14:49 No.1 編集 削除



「親父、分かってくれよォ。俺、彼女のこと、ちゃんと愛してるんだ!」
 熱心に愛を語るのは、獣医である息子だ。この男は、30代半ばほどであろうか。

「英寿」
 父親が、息子・英寿(ひでとし)をたしなめる。

 でも、英寿は父の言葉なんか耳にも入れていない。それほど、愛する彼女で頭がいっぱいになっていたのだ。

「彼女はね、僕がかっこいいこと言っても、ツンツンしてるんだ。でも、僕が『ありがとう』とか優しい言葉をかけると、デレデレしちゃうんだよ、かわいいでしょォ。しかもね・・・・・・」
 英寿の彼女自慢は止まらない。

 父は飽きれながらも、浮かれている息子に眉を吊り上げた。
「英寿! お前って奴は、自分が何を言っているのか、分かってんのか!」

 やっと、英寿は我を取り戻し、口をつぐむ。 けれど、彼女への思いは変わらないので、またすぐに口を開く。
「そんなこと、分かってるよ! ・・・・・・なァ、母ちゃんなら俺の気持ち許してくれるよなァ?」
 英寿は、救いの目を母に向ける。

 が、さすがの心優しい穏やかな母親も、息子を応援することはできなかった。
「英寿・・・・・・」

 母も父と同じ意見なんだ、と察した英寿は、怒りが頂点に達した。
「ああ、もういいよ! 俺、絶対彼女と結婚してやるからなアッ!」

 英寿は家を飛び出、職場へ向かった。

*.*.*.

「やあ、俺だよ、瑠璃」
 英寿は、彼女・瑠璃(るり)の部屋に入る。

「君に会いたくて、走ってきちゃった。それほど、君が好きなんだよ」
 英寿がこう言うと、瑠璃はぷいっとそっぽを向いた。
 そう、彼女は”ツンデレ”なのである。

「瑠璃。僕は君と結婚したい。瑠璃はどう思ってるの?」
 瑠璃は何も答えない。
 
 英寿は、最後の手段に出た。
 彼は瑠璃のそばへ行き、しっぽを撫でてやった。そう、”しっぽ”。
 すると、彼女は嬉しそうに鳴いた。

「ワンワン! クゥ~ン」

 そう、英寿の彼女・瑠璃は、”犬”なのだ。
 瑠璃という名の”犬”は、英寿の病院の患者。
 英寿は、犬に恋してしまったのである。

「好きだよ、愛してる。・・・・・・結婚しようね」
 英寿の彼女は、”ツンデレ犬彼女”であった。
2015/12/09(水) 17:35 No.2 編集 削除
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