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・・・・・・それは、物語がぎゅうぎゅうに詰まった、小さくて大きな缶詰。
@/ 世界一の接吻。
Yuru.∞@
姫は、なよ竹のかぐや姫のように美しいため、『かぐやの君』と呼ばれていた。
「一生君を離さない。愛している」
「まあ、でも・・・・・・」
かぐやの君が何か言う前に、右近の少将はその姫の唇を塞いだ。少将は接吻したまま、かぐやの君をぎゅっと抱きしめる。かぐやの君の髪のお香のにおいが、少将にはさらに愛しく思えた。
「君以外に、妻はいらない。君がいれば、わたしは幸せだから」
やっと唇を離し、少将は甘い台詞を吐く。
すると、姫は悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。
「では、接吻の感想は?」
頬を赤らめるかぐやの君。少将は見惚れながら答える。
「今までで一番幸せな接吻だったよ。世界一の接吻だ」
姫の笑顔が見たくて、少将は言ったのだ。
しかし、姫の態度はその正反対で。
「さようなら、右近の少将さま」
突然、姫は冷たくそう告げると、足音も立てず優雅にその場から去ろうとする。少将は驚いて、なんとか姫の透き通るような白い腕をつかんだ。
だが、かぐやの君はその少将の手を振り払う。
「『今までで一番幸せな接吻』ということは、今まで何度も女と接吻してきたのですね。私は、そ んな女好きの男とは、結婚なんてお断りですわ。・・・気をつけてお帰り下さいまし」
右近の少将は、呆然と立ちすくむしかなかった。
かぐやの君は、恵まれた姿にもかかわらず、生涯独身でいることになる。
それは、かぐや姫のように、求婚してくる殿方を、全員切り捨てていくからだ。
・・・・・・すべては、運命の人と結婚するため。
@/ ツンデレ彼女。
Yuru.∞@
「親父、分かってくれよォ。俺、彼女のこと、ちゃんと愛してるんだ!」
熱心に愛を語るのは、獣医である息子だ。この男は、30代半ばほどであろうか。
「英寿」
父親が、息子・英寿(ひでとし)をたしなめる。
でも、英寿は父の言葉なんか耳にも入れていない。それほど、愛する彼女で頭がいっぱいになっていたのだ。
「彼女はね、僕がかっこいいこと言っても、ツンツンしてるんだ。でも、僕が『ありがとう』とか優しい言葉をかけると、デレデレしちゃうんだよ、かわいいでしょォ。しかもね・・・・・・」
英寿の彼女自慢は止まらない。
父は飽きれながらも、浮かれている息子に眉を吊り上げた。
「英寿! お前って奴は、自分が何を言っているのか、分かってんのか!」
やっと、英寿は我を取り戻し、口をつぐむ。 けれど、彼女への思いは変わらないので、またすぐに口を開く。
「そんなこと、分かってるよ! ・・・・・・なァ、母ちゃんなら俺の気持ち許してくれるよなァ?」
英寿は、救いの目を母に向ける。
が、さすがの心優しい穏やかな母親も、息子を応援することはできなかった。
「英寿・・・・・・」
母も父と同じ意見なんだ、と察した英寿は、怒りが頂点に達した。
「ああ、もういいよ! 俺、絶対彼女と結婚してやるからなアッ!」
英寿は家を飛び出、職場へ向かった。
*.*.*.
「やあ、俺だよ、瑠璃」
英寿は、彼女・瑠璃(るり)の部屋に入る。
「君に会いたくて、走ってきちゃった。それほど、君が好きなんだよ」
英寿がこう言うと、瑠璃はぷいっとそっぽを向いた。
そう、彼女は”ツンデレ”なのである。
「瑠璃。僕は君と結婚したい。瑠璃はどう思ってるの?」
瑠璃は何も答えない。
英寿は、最後の手段に出た。
彼は瑠璃のそばへ行き、しっぽを撫でてやった。そう、”しっぽ”。
すると、彼女は嬉しそうに鳴いた。
「ワンワン! クゥ~ン」
そう、英寿の彼女・瑠璃は、”犬”なのだ。
瑠璃という名の”犬”は、英寿の病院の患者。
英寿は、犬に恋してしまったのである。
「好きだよ、愛してる。・・・・・・結婚しようね」
英寿の彼女は、”ツンデレ犬彼女”であった。
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